競馬を支配する血統理論
「競馬はブラッドスポーツ」という有名な格言(提言)がありますが、やはり競馬を語る上で避けて通れないのが血統。
いまから走るこの馬の父はどんな馬か母はどんな産駒を持っているのか、母の父はどんな馬だったのかなどなど。
すべては先祖から脈々と受け継いて来た競走馬の特徴、DNA、その力を可視化してレースの予想に役立てようというのが血統理論の根幹です。
そもそも競馬における血統ってなに?
近代競馬はたった3頭の馬から始まったと言われます。
サラブレッドの3大始祖
- バイアリーターク
- ゴドルフィンアラビアン
- ダーレーアラビアン
この3頭の馬の子供たちを掛け合わせて生まれたのが現在のサラブレッド、すなわちThorough [ 完璧 ] + bred [ 躾 ] です。
品種改良を重ねるようにより強く、美しい馬の子孫だけを淘汰していった結果生まれたのがサラブレッド。
その過程はさながら精密な実験のような形を取っていて、どの馬とどの馬を掛け合わせて(配合)どんな特徴の馬が生まれたのかがすべてのサラブレッドについて記録が残っています。
この3大始祖に繋がる血の樹形図。
これがサラブレッドの血統です。
一番影響のある父系の父
ただ単に父や母のそして祖父母やさらにその父母の名前が分かるだけでは意味がありません。
その父や母もサラブレッドなのでどのような能力を持っていたのか、受け継いでいたのかその事からいま目の前にいるサラブレッドの顕在・潜在能力を推し量るのが血統理論です。
いわばまだレースに走っていない馬でもしっかりと血統を辿っていき、馬体や馬の仕草や特徴、正確などと照らし合わせてみればある程度の能力が推し量れる便利な理論でもあります。
そうはいっても一番直接的にその競走馬に影響を与えられるのはやはり父、つまり直接父馬となる種牡馬だというところは疑う余地がありません。
近年の日本競馬ではサンデーサイレンスというアメリカのケンタッキーダービー馬が圧倒的支配力で市場を占有し、ほとんどのGⅠの勝ち馬がその産駒という一種の異常事態も引き起こしました。
いまでもその勢いは衰えることを知らずサンデーサイレンスを父に持つ種牡馬がさらに市場をそしてレースを席巻し続けています。
この状況を見ているとやはり父馬の能力というものの影響力の大きさをあらためて思い知らされます。
母系は母も母父も大事
対して母系、競走馬の母や母父の影響はそこまであからさまなものではありません。
どちらかというと底力、そういえばそういう影響があるのかな?と思わせる程度の能力を受け継ぐことの方が多いようです。
ただしそうはいっても優秀な母馬は種牡馬の能力をストレートに、時に何倍にもして仔馬に伝えることが出来るので要素として侮ることは出来ません。
いわゆる名牝という存在です。
代表的な名牝にビワハヤヒデ・ナリタブライアンの兄弟を産んだパシフィカス、ドリームジャーニー・オルフェーヴルを産んだオリエンタルアート、そして自身の競走成績も超一流のエアグルーヴなどが上げられます。
いずれも複数の歴史に名を残す名馬を生み出しているのが特徴です。
普通の牝馬だったら1頭出世頭がいるだけでも凄いのに複数の一流馬・超一流馬を送り出しているこれらの名牝たちにはほんと頭が下がります。
血統理論は良血に落ち着く?
血統理論は種牡馬や母、または母父の能力をどれだけ受け継いでいるか、または乗り越えられているかがカギになります。
ただやはりそこは走ってみないと分からない未知数の部分なので勢い、父や母や母父にネームバリューのあるいわゆる良血馬を高く評価しがちになります。
もちろんその事自体は悪い事ではありません。
とくにあまり成績がよくない良血馬がある日突然重賞や時にはGⅠを勝ったりすることはよくあります。
これはもう血のなせる技というしかありません。
こういう機会を捉えられるのが血統理論の良い点です。
けれどもあまり良血ばかりに目が行ってしまうのも考え物です。
本来であればどの馬も血統から公平に判断し、あくまでも純粋にその馬の血の持つ力を見極めるというのが正しいのかもしれません。
走る馬が血統を作っていくという競馬の一側面
競馬というのは血統の支配するスポーツであり、そのことは競技生活を終えた後の生涯その馬に付いて回ります。
どんなに血統的に評価されていなかった馬でも、連戦連勝して己が強さを天下に知らしめれば種牡馬として自分の血を後世に伝えていく事が出来るし、逆にどれだけ良血でも強さを証明できなかった馬は静かに血統という血の樹形図から外れていきます。
残酷なようですがより純粋に強い血統を作っていくという至上命題がある限り、これは仕方のないことかもしれません。
そしてこの血統が続いていく限り、それを補完する血統理論というのも永遠と続いていくものでもあります。